労働集約型産業の生産性改善

労働集約型産業の生産性改善

労働集約型産業の設備投資は労働生産性の改善に結びついていない

人手不足と設備投資の関係を分析する方法として、最初に労働集約型産業資本集約型産業の2つの産業特性に分類し、それぞれの動向を確認します。

 

産業特性別の設備投資

今般の景気回復局面において、資本集約型産業は、景気回復当初から一貫して増加傾向を示しており、資本集約型産業は、労働投入ではなく設備投資主導で、生産・事業活動能力を高める傾向が顕著です。

 

一方の労働集約型産業は、景気回復当初は人件費と設備投資をともに縮小させ、その後景気回復が長期化すると、人件費を増加させるのと同時期に、ほぼ同じ緩やかなペースで設備投資を増加させてきました。人件費と設備投資の動きに大差がない点が、資本集約型産業と異なっています。

 

設備投資と人件費

労働集約型産業の設備投資は、人手不足の度合いが強まったことを背景に増加していますが、そのペースは資本集約型産業に比べると緩やかなものに留まっています。これは、積極的な投資というよりは、人手不足で人件費が増え始めた段階で、やむにやまれず最低限の設備投資をしてきた、といった消極的な姿が浮かび上がります。

 

産業特性別の労働生産性

資本集約型産業は、上下を伴いながらも上昇基調を示しているのに対し、労働集約型産業では、資本集約型産業と比べて、労働生産性の改善が限定的でした。
これは、労働集約型産業の設備投資が労働生産性改善に効果を発揮していないことを意味し、特に非製造業での改善が遅れています。

 

まとめ

日本の労働力人口は減少傾向にあります。そうなれば、従来同様に労働投入を増やすことは出来なくなり、生産・事業活動を拡大させるためには、労働生産性の改善が不可欠となります。

 

現時点で労働集約型とされる産業も、徐々に資本集約型産業へと近付いて行かざるを得なくなると考えられます。

 

今後は、人件費の増加に並行して設備投資を増やすのではなく、労働生産性を高めることを目的に、デジタル化や機械化など新技術も活用して、質と量の双方の面で十分な設備投資が必要となるでしょう。

 

もっと言えば、労働集約型産業の設備投資は、日本の中長期的な成長力を見ていく上で、重要なポイントになると考えられます。

 

参考資料

三井住友信託銀行 調査月報 2019 年 7 月号