何かの報告書で、冒頭に近年の経済情勢を語り、そこから自社の状況に結ぶことがよくあります。
意外と冒頭の部分が難しいのですが、景気動向指数などを押さえておけば何とかなります。
様々な経済活動において重要かつ特に景気に敏感な複数の指標を組み合わせて総合的な景気判断をするための指標です。
景気に対し先行して動く先行指数、ほぼ一致して動く一致指数、遅れて動く遅行指数の3つの指数があます。一致指数は景気の現状把握に利用することができ、先行指数は一致指数に数ヵ月程度先行する傾向があることから景気の予測を目的として利用されます。
遅行指数は一致指数に数ヵ月から半年程度遅行する傾向があることから事後的な景気の確認に用いられます。会社の意思決定に使いたいのは、先行指数と一致指数ですよね。
では、ニュースで使い方を確認してみましょう。
Case.1:6月の全国消費者物価指数2.2%上昇約7年ぶりの大きさ(2022年7月22日)
総務省が今朝発表した6月の全国消費者物価指数は1年前に比べて2.2%上昇の101.7でした。伸び率は2015年3月以来およそ7年ぶりの大きさとなりました。
⇒消費者物価指数は遅行指数なので確認のみのニュースですね。
Case.2:求人倍率1.27倍で改善6ヵ月連続(2022年7月29日)
6月の有効求人倍率は全国平均で1.27倍となり前の月を0.03ポイント上回りました。これで6ヵ月連続での上昇となりました。一方総務省が発表した6月の完全失業率は前の月と同じ2.6%で横ばいでした。
⇒有効求人倍率は一致指数なので景気は上向きという判断、完全失業率は遅行指数なので、ニュース全体でみれば緩やかな上昇傾向という判断ができるニュースですね。でも、総合的な判断は景気動向指数が発表されてからですね。
Case.3:景気指数3ヶ月ぶり上昇(2022年8月5日)
内閣府が5日発表した6月の景気動向指数は景気の現状を示す一致指数が1ヵ月前より4.1ポイント高い99.0となり3ヵ月ぶりに改善しました。また景気の先行きを示す先行指数は0.6ポイント下がった100.6で2ヵ月連続の下降となりました。
⇒やっと景気動向指数ですね。先行指数はまだコロナに及び腰といったところですが、GOサインを出してもよい水準ではないでしょうか。
GDPは、経済活動の水準を表す最も包括的な指標です。日本国内で一定期間内に生み出された付加価値の総額をいい、4半期単位で発表されます。ニュースでは、成長率に着目しているのか、1%上がったとか下がったとかを報道します。
結論としては、全国規模の指標を鳥取県の小規模企業の意思決定に使うのは無理があるので、あまり深入りはやめておきましょう。なお、県内GDPもありますが、発表が2〜3年後と大幅に遅れるので、リアルタイムには使えません。
博士号の山澤 成康さんは、「都道府県別月次実質GDPの推計と応用」などの論文で、国の速報から地方の指標を推測するアルゴリズムを公開しています。この手法を用いるのも、ひとつの手でしょう。
さて、GDPについて一応、ニュースで使い方を確認してみましょう。
Case:GDP 3期連続のプラス 年率換算で↑2.2% (2022年8月15日)
2022年4月から6月期のGDPは、前の3ヵ月と比べた実質の伸び率が年率に換算してプラス2.2%と3期連続のプラス成長となりました。内閣府が発表した4月から6月期のGDP速報値は物価変動を除く実質で、前の期に比べて0.5% のプラス、このペースが1年続くと仮定した年率換算は2.2%のプラス成長となりました。実質GDPの実額は542兆円となり、コロナ前2019年10月から12月期の水準を初めて回復しました。GDPの半分以上を占める個人消費が、プラス1.1%と全体を押し上げました。3月にまん延防止等重点措置が解除され、外食や宿泊などのサービス消費が持ち直しました。
というわけで、GDPを地方経済の意思決定に使うことは困難ですので、次項の日銀短観を使うことにしましょう。
日銀短観とは、正式には「企業短期経済観測調査」といいます。日本銀行が景気の現状と先行きについて企業に直接アンケート調査をし、その集計結果や分析結果を4半期単位で発表されます。
調査では全国の大手企業と中小企業、製造業と非製造業などで分けて、約1万社を対象に、業績や状況、設備投資の状況、雇用などについて実績と今後の見通しを聞きます。回収率が高く、調査の翌月に公表され、景気動向を判断する重要な経済指数となっています。
なお、日銀の支社単位で調査するのか、地方でもリアルタイムな景気判断が可能です
では、ニュースで使い方を確認してみましょう。
Case.1:日銀の短観 山陰の景気非製造業で持ち直し マイナス幅縮小
日銀の短観が発表され、山陰両県の景気判断を示す指数は、原材料価格の上昇などから製造業で悪化したものの、非製造業で持ち直しの動きがみられたことから、マイナス幅が縮小しました。日銀の短観は、景気の現状などについて3ヵ月ごとに企業から聞き取る調査で、今回は山陰両県の176社から回答を得ました。それによりますと、景気が良いと答えた企業の割合から悪いと答えた企業の割合を差し引いた指数は、全産業で-3ポイントとなり、前回調査から1ポイント改善しました。このうち製造業では、原材料価格の上昇などで輸送用機械や電気機械を中心に影響が出て、-2ポイントと前回調査から9ポイント下げました。一方非製造業では、新型コロナの感染状況が比較的落ち着き、ことし5月の大型連休ごろから宿泊・飲食サービスで回復傾向が見られたことなどから、こちらは前回調査よりも5ポイント改善して、-5ポイントとなりました。先行きについては、全産業で2ポイントと今回よりも1ポイント改善しています。
⇒地域密着で解説してくれるので助かりますね。若干原材料の高騰が新たな課題となりそうですが、鳥取県の経済状況は概ね順調に回復しているとみてよいかと思います。
Case.2:6月の日銀短観 大企業製造業の景況感2期連続悪化 (2022年7月1日 )
日銀は今日、6月の短観を発表し、大企業製造業の景況感を示す指数は二期連続で悪化しました。大企業製造業の景況感を示す業況判断指数はプラス9と、3月に実施した前回調査から5ポイント悪化しました。原材料コストの高騰と中国のロックダウンの影響で部品の供給不足が続いていることが、景況感を押し下げました。中でも木材・木製品は前回調査から20ポイントも悪化し、鉄鋼も16ポイント悪化しました。一方で大企業非製造業の景況感を示す指数は、二期ぶりの改善となりました。3月下旬にまん延防止等重点措置が解除されたことで、個人サービスや宿泊・飲食サービスが大きく改善しました。
⇒日本企業は意外に悪くないですよね。何ポイント下がったことばかり報道されると景気が悪い気がしますが、過半数が景気がよいと回答しているのですから。でも何ポイントが安全水域とか基準がないので、報道される変動量に加えて絶対値も見なければなりませんね。下の図だと、コロナ前の高景気の20ポイントくらいが理想かなと思いますけど。
1万社のデータですから1ポイントは大きいです。
鳥取県内の経済情勢のコメントを書くときには、直近の日銀短観(県内版)を使い、補足的に景気動向指数を使うようにしましょう。
なお、このサイトでは幅広い産業を対象としていますので、より業界を絞りたい場合は、別サイトに掲載しておりますので、そちらへお進みください。
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